愛知・岐阜の注文住宅・リフォーム 長久手Studio | 中島工務店

解説!ウッドショックの背景とお客様へのアドバイス~木材不足で着工延期が現実に

こんにちは、愛知・岐阜の注文住宅&リフォーム 長久手Studioです。
住宅建築のプロが納得できる家づくりのヒントをお話しするこのブログ。
今回のテーマは『ウッドショック』です。

2021年4月、当社が把握している範囲ではありますが、杉や桧など国産建築用材の価格が2~3週間でおよそ2割も高騰しました。
国産材市場に携わっている人からは「木材が時価になるなんて」と驚きの声が上がっています。
そんなことが起こっている原因がウッドショック。
ウッドショックとは、輸入材の供給不足に端を発し、国産材を含む建築用材の供給が不安定になって価格が高騰している状態です。

ウッドショックのせいで着工が遅れるなどの影響も出始めていて、ネット上ではお施主様の「今は契約を見合わせた方がいい?」といった相談も見受けられます。
今回はこのウッドショックの背景と今後の見通し、お客様に対するアドバイスをまとめました。
家づくり検討中のお客様に対する結論は、ウッドショック下で建てるメリットは一切ないから急がないなら様子見を。
ただし「いつまでに建てたい」という期限があるならできるだけ早く契約した方がいい
です。
詳しくは本文をご覧ください。
また最後には、中島工務店が直面している現状を率直にお話ししています。
ウッドショック下の工務店の実例のひとつとしてご覧いただければと思います。

この記事でわかること
●ウッドショックが起こった背景
●国産材の供給を簡単に増やせない理由
●今後の見通し
●家づくり計画中&契約済のお客様へのアドバイス
●中島工務店の現状

 

ウッドショックの背景 ①建築用材の半分が輸入材

ウッドショックは輸入材の供給不足から起こっていますが、その背景にはそもそも日本の建築用材の半分が輸入材だという事情があります。

林野庁の資料によると、令和元年(2019年)の製材用材の自給率は51.0%
2020年の木造住宅着工数は約48万戸ですから、おおざっぱに言っておよそ24万戸分が輸入材でつくられていて、その木材が十分供給されていないことになります。
足りないベイマツ(おもにカナダ産)などの代わりに、多くの会社が杉や桧といった国産材を使い始めました。
買う人が増えたからといって国産材の供給量が急に増えたりはしませんから、もともと国産材を使っていた住宅会社・工務店と「限られた国産材」を奪い合うことに。
このように輸入材が不足→国産材を代用→国産材も不足という流れで、ウッドショックは起こってしまいました。

 

ウッドショックの背景 ②アメリカの木材需要が急増

では、なぜ輸入材が不足したのかというと、アメリカで木材需要が急増したのが理由のひとつです。
新型コロナの影響で経済が滞ったのはアメリカも同じでしたが、その対策として政策金利が実質0%という低金利になりました。
これにより住宅ローン金利も大幅に低くなり、たくさんの人が家を建て始めたのです。

家を建てるには木材が必要で、これまで日本に輸入されていた木材がアメリカで使われるようになりました。
日本でも必要なのにどうしてアメリカが優先されるの?と思いましたか。
理由は、アメリカの方が効率よく販売できるから。
日本向けは品質基準などが厳しいのですが、アメリカはそこまで厳しくありません。
品質が多少よくない木材でもまとめて買ってもらえるんですから、同じ値段なら売りやすい方に売りますよね。
こうして「限られた輸入材」をアメリカと奪い合うことになり、アメリカに優先的に供給される事態が起こりました。

なお、もともと日本で建築用材に使われる針葉樹の輸入量は、アメリカや中国の輸入量の1割ほどしかありません。
より市場が大きく、高く買ってもらえるアメリカや中国が優先されるのは当然といっていいかもしれません。

 

ウッドショックの背景 ③世界的なコンテナ不足

カナダから輸入できないならヨーロッパから運べば?と言いたいところですが。
確かに欧州材をたくさん使っている住宅会社もありますが、そこでもウッドショックは起こっています。
背景には世界的なコンテナ不足があります。

新型コロナの影響で、世界的に海運業が一時大幅に落ち込みました。
各国の経済停滞、ロックダウンなどによって荷物の取扱量が大幅に減少し、船会社の多くがコンテナを返却・売却する事態に。
幸いヨーロッパや中国はいち早く経済が持ち直し始めましたが、だからといってコンテナを急に増やすことはできません。
結果的に海運がコロナ前の状態に戻っておらず、ヨーロッパの木材は陸路で運べる地域に供給されるようになりました。
もともとヨーロッパではEU圏内への供給を優先していますが、EU圏内に加えて中東などへの輸出が増えているそうです。

 

国産材の供給を増やせない理由 ①国内林業の減産体制&補助金事情

ウッドショックのおおまかな背景をお話ししましたが、「需要が増えて価格が高騰してるなら国産材の出荷量を増やせばいいじゃない!」と思いませんか。
普通は需要が増えたら供給も増やすのが商売です。
見方を変えれば”稼ぎ時”ですもんね。
ところが、国産材市場にはそうはいかない事情がいくつかあります。
ここからは山や製材業者と密接に連携した家づくりをしている中島工務店が関係者に聞いたお話の一部をご紹介します。

国産材の自給率は上昇傾向ではありますが、大幅な伸びが期待できる状況ではありません。
そのため、国内林業全体としては減産体制にありました。
予測される需要に合う程度の量を供給するよう調整しているということです。

日本の山は急峻で、国産材を伐り出すにはかなりコストがかかります。
木材の自給率が下がったのも、1964年の木材輸入自由化以降、安価な輸入材との価格競争に負けたのが理由です。
実際、国内林業は多くが補助金頼みで経営しています。
補助金なしで伐り出しても赤字になるため、補助金を利用しながらあらかじめ決められた量を伐り出しているのが実情です。

つまり、需要が急に増えても補助金がなければ赤字だから伐り出せないというわけです。
これが国産材の供給量をすぐに増やせない理由のひとつです。

原木市場

 

国産材の供給を増やせない理由 ②林業のしくみ

そうはいっても国産材が高騰してるなら補助金なしでも伐り出せるんじゃないの?となりますよね。
ところが、これもそう簡単ではないんです。

先ほどお話しした減産体制や補助金など、国内林業のしくみを支えているのは各地の森林組合です(その上位団体を含めて組織化されています)。
森林組合は森林所有者=山主(やまぬし)が集まった団体です。
一方、山から木を伐り出すのは杣(そま)と呼ばれる人たち、いわゆる林業に従事している人たちです。
山から切り出した木は森林組合が運営する原木市場で競りにかけられるのが一般的です。
現在はそこで高値で取引されているわけですが、その売上は森林組合を通じて山主に還されます。
木の売り主なのだから当然です。

しくみがわかってきましたか?
そうです、木材が高騰してその売上が届くのは山主であって杣や林業会社ではありません。
ウッドショックは木を伐り出す人たちにとって“稼ぎ時”だとは言い切れないのです。

このように言うと森林組合や山主が悪く聞こえてしまうかもしれませんが、森林組合は長く低迷する国内林業を支えてきた重要な団体です。
山主も伐ってもお金にならない森林に手をかけて、日本の山と林業を守ってきました。
いま一時的に価格が高騰しているからといって、それよりはるかに長い期間苦しい思いをしながら国内林業を守るためにつくってきたしくみを簡単に批判することはできません。
国内林業が成り立たなくなってしまったこと自体が、ウッドショックよりずっと根深い問題なのです。

とはいえ、こうした事情も簡単に供給量を増やせない理由のひとつではあります。

 

国産材の供給を増やせない理由 ③乾燥機の限界

それでも杣や林業会社にお金を払えば伐り出すことはできます。
もしかしたらそんなことを始めている山主や森林組合もいるかもしれません。
が、これも簡単ではありません。
木を伐り出して製材できたとしても乾燥機に限界があります。

建築用材は製材後、乾燥が必要です。
一定レベルまで乾燥していないと、建築後に木が収縮したり曲がったりして不具合が起きるからです。
乾燥方法には乾燥機を使う人工乾燥と、ストックヤードに積んで太陽と風で乾燥させる天然乾燥があります。
天然乾燥には少なくとも1年以上かかりますので、ウッドショックのような短期需要に対して急に供給量を増やすことはできません。
一方、人工乾燥の場合は乾燥機の数と容量に限界があるため、こちらも一定以上の量は乾燥できないのです。
人工乾燥にかかる期間は温度や機械によって数日~数週間ですが、乾燥機も需要に応じて必要な台数を準備しているので普段扱わない量を急に乾燥する余力はほとんどありません。

よって、乾燥できる以上の量を製材することも伐り出すこともないという結論になります。
やはり急に供給量を増やすのは難しいといえます。

いろいろ説明してきましたが、実は一番大きな理由は「この需要は一時的」と多くの林業関係者が思っていることかもしれません。
昨年のマスク不足のときの騒動のように、一時的な需要不足を乗り越えたら沈静化すると多くの人が考えています。
だとすると、一時的な需要のために投資して供給量を増やすことはありません。
やはり国産材の供給増は難しいでしょう。

木材乾燥機

 

ウッドショックで木造住宅は高くなる?

では、ウッドショックで木造住宅の値段は高くなるのでしょうか?
答えは、ウッドショックだけでは影響は大きくないけれどほかの建材も高くなっているため、全体として値上がり傾向です。

一般的な木造住宅の見積もり金額のうち木材が占めるのは1割前後。
2,000万円の家で200万円ほどです。
その木材価格が2割上がったとすると40万円アップです。
小さな金額ではありませんが、2,000万円に対してはすごく大きいわけでもありません。
40万円ならどこか削れば減額できないこともありません。

しかしながら、木材以外の建材や設備も値上がりしています。
住宅設備は4月に価格改定があり、値上がりしました。
また原油価格高騰を受けて、鉄製品を中心に様々な建材が値上がりしています。
結果的にあらゆる部材・建材・設備が高くなり、建築費全体が高くなっているのが現在の状況です。
今後も下がることはまずないと考えられます。

 

今後の見通し

ウッドショックがいつまで続くかはなんともいえません。
輸入材の問題である以上、世界経済の動向にも左右されるため簡単には予測できません。
ですが、木材先物取引の市場が高騰していることからもしばらくは続くと考えるべきでしょう。

今回の件を受けて、大手ハウスメーカーなどは木材の仕入れ先の分散を図る可能性があります。
分散先に国産材の供給元が含まれていれば工務店にも影響が及ぶ可能性がありますが、現時点ではなんともいえません。
「年間●棟建てる」と予測できる工務店なら商社やプレカットと一定量の供給を約束するしくみを採用するかもしれません。
年間の買付量を約束する代わりに優先的に確保してもらうしくみです。
実際そういったしくみを採用している工務店は今のところウッドショックの影響を受けておらず、当面必要な木材を確保できています。
しかしながら日本の大半を占める中小工務店はこうしたしくみを採用できるほどのチカラがありませんので、やはりしばらくは不安定な状態が続くと考えられます。

 

家づくりを検討中のお客様へ

現在家づくりを検討中のお客様には、できるだけ早く契約して住宅会社・工務店に木材を確保してもらった方がいいとおすすめします。
こう言うと「そんなこと言って契約を急がせている」「煽って契約させようとしている」と思われるかもしれませんが、木材の供給不足は実際に起こっています。
必ず数百棟、数千棟建築する大手ならともかく、年間数棟から数十棟の私たち工務店は建てるかどうかわからない時点で材料の調達はできません。
ご契約いただいてから調達するのが基本です。
先ほどお話しした通り、設備や建材も軒並み値上がりしています。
少しでも早く調達した方が価格を抑えられるのが現状です。
煽っているわけでも脅しているわけでもありません。
「お子さんの入学までに」といった期限があるお客様は、早めに契約した方がいいでしょう。

一方、急いでいないならしばらく様子見してもよいと思います。
ウッドショック下の不安定な状況で建てるメリットはありません。
ただ建材や設備はウッドショックとは無関係に上がっていますので、待てば待つほど少しずつ高くなるのはやむを得ないと考えてください。

すでに契約済の場合、構造や工法の変更がないか住宅会社に確認しましょう。
ベイマツの梁を杉に変えた場合、杉の方が強度が低いため梁が大きくなるのが通常です。
もちろん問題ない強度に設計変更されるはずですが、気になる方はどのように変更されるか確認しましょう。
中には材料変更によってやむを得ず工法も変えるケースもあると聞きます。
構造や工法にこだわりがある場合は、必ず確認しましょう。

 

中島工務店の事情~所有林の伐り出しは困難

最後に、中島工務店の事情をお話しておきます。
ウッドショック下の工務店の実情の一例としてご覧ください。

中島工務店は林産地・岐阜県加子母に本社があり、地域材を使って地域の職人が建てる産直住宅をつくっています。
地域の林業・製材関係者との連携も深く、自社プレカット工場を持つなど山元(やまもと/材料を出す山に近い)の会社です。
自社でも山を所有しており、一般的な工務店に比べるとウッドショックに対応しやすいと思われることでしょう。

そのような期待に応えるべきところなのですが、実際には当社も木材の確保に苦心しています。
中島工務店は4月下旬時点で、柱や梁などの大きな構造材は十分確保できていますが、間柱や垂木といった小さな材料の確保が難しいといった状況です。
「大きな材があるんならそれを小さく加工すれば?」と思われるかもしれませんが、それも簡単ではありません。
一般的に製材業者には得意分野があり、大きな部材を挽く会社が所有する機械は小さな部材の加工に適しておらず、簡単には対応できません。
また小さな部材は細い木(小径木)からとるのが通常なので、大きな木材から加工すると割高になってしまいます。
とはいえ、背に腹は代えられない状況もありますので、一部ではそんな試みも始めています。
ただその分はどうしても費用が高くなってしまうため、どんどん進めるわけにもいかないのが実情です。

「山を持っているんだから伐り出せば?」というご意見もあると思います。
それがそうもいかないのは、やはり先ほどお話しした通り、補助金がなければ伐ったら伐った分だけ赤字になってしまうからです。
木材価格が高騰しているとはいえ、補助金なしで伐り出せるほどの価格ではありません。
加子母で木を伐り出せる杣の数も限られており、一時的な需要増加に応えるのは困難です。
現在は製材業者、プレカット工場等と連携して木材確保に奔走していますが、徐々に着工時期をお約束できない恐れが出てきています。

ウッドショックの実情と対応については、今後も状況に変化があれば発信してまいります。
お客様には落ち着いて住宅会社・工務店の情報や方針を聞きながら、それぞれのご家族の事情に応じた家づくりの進め方を相談していただければと思います。

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